今さら聞けないブランディングの意味とは
1 はじめに
マーケティングに関わる仕事をしている、もしくはマーケティングに興味がある方なら「ブランディング」という言葉、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
ブランディングは企業の成長にとって欠かせない戦略のひとつです。そしてブランド戦略の考え方は、もちろんWebの世界にも当てはまります。そんなこと当たり前じゃないか、知ってるよ!と、このコラムを読んでいるあなたは思うかもしれません。ですが、「(Webサイト)ブランディングって何?」という問いに対してきちんと説明できる自信はあるでしょうか? 正直、私は自信がありませんでした。
人に説明できないということは、きっと理解が十分ではないということ。
ということで、ブランディングを正しく理解するべく、ブランディングとはどういうもので、どのように行うかを勉強してみました。それをこのコラムでご紹介いたします。また、ブランディングをWebの世界に取り込むときの考え方も併せてご紹介します。
2 ブランディングとは
ブランディングとは一言で言うなら「ブランドを構築するための活動の総称」です。 ブランディングの教科書的な存在である『戦略的ブランド・マネジメント』の著者ケビン・レーン・ケラー曰く、「ブランディングは精神的な構造を創りだすこと、消費者が意思決定を単純化できるように、製品・サービスについての知識を整理すること」だそうです。
なんだか小難しく感じてしまいますが、ざっくりと捉えるならば、「ある商品やサービスまたは企業に対して(明確な)イメージを創り、そのイメージを消費者の頭や心の中に植え付けるための方法がブランディングだよ」ってところでしょうか。
このことを踏まえると、名前やロゴ、コピー、パッケージ、そしてWebサイトなどは、あるブランドに対する明確なイメージを表現し、それを消費者に持たせるための手段であると考えられます。つまり、それらはすべてブランディングのひとつであると言えるでしょう。
3 そもそもブランドって何?
さて、ここまで何度か「ブランド」という言葉が出現していますが、そもそもブランドって何でしょう?ブランドと聞いて多くの人がぱっと思い浮かべるのは「シャネル」や「プラダ」といった、いわゆる「高級ブランド」ではないでしょうか。日本では特に、ブランド=高級ブランドのイメージが強すぎて、市場において多くの認識違いが生じている部分があるように思えます。ブランディングを理解するためには、まずはブランドという言葉の持つ意味を正しく認識することが欠かせない一歩となります。
3.1 ブランドという言葉の本当の意味
ブランドとは、「消費者が抱いている共通のイメージ」であり、「無形の価値」です。モノとの違いを考えると、ブランドを理解しやすいと言われています。
例えば、「車」というと、ひとつのモノ(製品)ですよね。ですが、「ポルシェ」「レクサス」「ヴィッツ」「ラパン」といった名称を出すと…それぞれに対して何らかのイメージが浮かびませんか?それは、これらの名称が単なる車名という枠を超え、ブランドになっているということなんです。
高級ブランドや有名ブランドだけでなく、すべての企業や商品・サービスはブランドになることができます。また、ブランドを作る上で一番重要なのは消費者ですが、従業員や株主といった企業側の人も重要な要素になることがあります。
上記の考え方をWebの世界に適用すると、以下のように言い換えることができます。
- 「Google」のみならず、どんな小規模なサイトでもブランドになりえる
- ブランドはWebサイトのロゴを意味しているのではない
- Webサイトの見栄えをカッコよくするだけではブランドを構築できない
- ブランドを作るときに一番重視すべきなのはWebサイトのユーザーだが、サイト管理者・運営者・カスタマーセンターなども大事である
3.2 ブランドの役割
ブランドの役割というのは、そのブランドの成長と共に変化していきます。成長ステージを大きく3つに分けると、以下のようにまとめることができます。
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ステージ1【認知/識別】
自社の製品の認知、他社の製品と識別するためのものとして利用されます。-
消費者にとっての役割…「認知」
購入における意思決定の時間短縮や手間を省くことができます。
例)我が家はビールと言えばキリンラガー -
企業にとっての役割…「識別」
他社や他の商品等競合と差異化することができます。
例)リンゴのマーク→Apple製品を思い浮かべる
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消費者にとっての役割…「認知」
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ステージ2【信頼/品質保証】
品質保証等の信頼を与えうるものとなります。-
消費者にとっての役割…「信頼」
購入におけるリスクの低減・回避の指標になります。
例)スタジオジブリの作品なら映画館にわざわざ見に行ってもいいな -
企業にとっての役割…「品質保証」
品質・信頼性を保証することにより、長期安定的な売り上げの確保につながります。
例)次に車を買い替えるときもTOYOTA車にしよう
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消費者にとっての役割…「信頼」
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ステージ3【愛着/企業目的】
パワーブランドとなります。-
消費者にとっての役割…「愛着」
愛着がわき、そのブランドを選択・使用することで満ち足りた気分になります。また、自己表現の手段にもなります。
例)シャネラーなどブランドの熱狂的ファン -
企業にとっての役割…「企業目的」
価格が他社より多少高くても商品やサービスを購入してもらえるようになります。
例)ハーゲンダッツ→他のアイスより高い値段設定なのにファンが多い
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消費者にとっての役割…「愛着」
ブランド戦略はどのステージを目標とするかで採るべき戦略が変わります。到達ステージをはっきりと決めたうえで戦略を立てる必要があります。
Webサイト、その中でも特にECサイトは同じような成長過程が見られます。前述した3つの成長ステージの中で、Webサイトの世界ではステージ2が特に難しいと言われています。「信頼」というものは人の感情に左右されるものだからです。信頼という感情を引き出すには手間や時間をかけなければなりません。具体的には、お問い合わせへの迅速かつ丁寧な対応や、顧客のプロファイリングを行うなどの作業が必要となってきます。また、個人情報保護の観点から、顧客の情報は慎重に取り扱わなければなりません。万一情報漏えいが起こってしまえば、今まで積み上げてきた信頼が一瞬にして崩れてしまいます。信頼を得るための行動を継続して行っていくことでパワーブランドサイトに成長していけるのです。
4 なぜブランディングが重要なの?
ブランドという言葉について理解が深まったところで、ブランディングに話を戻したいと思います。そもそもブランディングってなぜ重要なのでしょう?
私が思うに、ブランディングが重要な理由、それは、多くの競合他社が存在する中、あなたの会社や商品・サービスが消費者にとって魅力あるものにならなければ、市場の中で勝ち残っていくことができないからです。
ブランディングがしっかりできていれば、他社より高い金額であっても商品やサービスを購入していただけて、なおかつ購入者に満足感を与えることすらできるのです。少し前に流行った「Win-Win」ってやつですね。
ところが、ブランディングがきちんとできていないと、価格競争に参入せざるを得なくなってしまいます。ひとたび価格競争に巻き込まれてしまうと、そこから抜け出すことは非常に困難です。
景気が良くなってきているとは聞きますが、多くの中小企業にとってはまだまだその実感が湧きにくいのではないでしょうか。そんな今の時代には尚更、競争力を高めることに繋がる「ブランディング」は欠かせなくなってきていると感じます。
5 ブランディングの手順
ブランディングの重要さは理解できても、実際ブランディングを実行するとなると、一体何から手をつければいいのでしょう。手当たり次第に思いつくことを行って、時間もお金も無駄に…なんてことは避けたいですよね。 実は、ブランディングには4つのステップがあるとされています。Webサイトの構築においても当てはまる、その4つのステップを以下にご紹介します。
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ステップ1 【ブランド価値規定】
企業もしくは商品・サービスが消費者に与えるブランド価値をはっきりさせます。
<Webサイトの場合>
Webサイトがユーザーに与えうるブランド価値を想起させるような写真の選定や、配色の選択、コンテンツ作成を行い、サイトを組み立てます。 -
ステップ2 【ブランドシンボル設計】
ブランド価値をわかりやすく示すような名前、標章、コピーなどを決めます。
<Webサイトの場合>
ユーザーが記憶しやすい名前やロゴ、それらに調和するアイコンや絵図、写真、キャッチコピーなどを用意し、Webサイト内に適切に配置します。統一感を失わない程度にロゴ等のシンボルは目を引くようにします。 -
ステップ3 【包括的なブランディングの実施】
ブランド価値を社内等の関係者で共有し、マーケティング活動全般において徹底してブランディングを行う。
<Webサイトの場合>
Webサイトの見た目や内容だけではなく、ユーザーからのお問い合わせ対応など、あらゆる面においてブランドを意識して行動する必要があります。特にECサイトでは、「ここでモノを買って大丈夫だろうか、ちゃんと届くだろうか」と心配しているユーザーの不安を取り払い、信頼してもらうためにも、お問い合わせや注文に対する迅速で丁寧な対応は必須です。 Webサイト上だけではなく、テレビやラジオ、雑誌など複数のメディアを組み合わせた広告戦略を取ることで相乗効果が生まれることが期待できます。 -
ステップ4 【ブランド管理体制】
ブランディングの結果を評価し、課題を洗い出し改善する。
<Webサイトの場合>
変化の速いWebの世界では、技術の進歩やユーザーの嗜好の変化などに特に敏感で居続けなくてはなりません。そういった変化に遅れずに対応できるようにしておく必要があります。
こういったステップを踏み、ブランディングを行っていくことで、自社のブランドにアドバンテージをもたせることができます。
6 ブランドの価値規定
先述のブランディング手順で出てきた「ブランド価値規定」はブランディングを行う上で根幹となる重要な要素なので、もう少し掘り下げて紹介したいと思います。
ブランドの価値規定を明確にするにあたって、「ブランドエッセンス」と「ブランドパーソナリティ」という言葉を理解する必要があります。なぜなら、「ブランドの価値規定を明確にする=ブランドエッセンスとブランドパーソナリティがどういったものであるかを追求する」ことだからです。
ブランドエッセンスとは、消費者に対して企業や商品・サービスが提供できる価値をを集約したもので、「消費者への約束」とも言えます。 たとえば、スターバックスのブランドエッセンスは「スターバックス体験」です。スターバックス体験とは、「日常生活の中でサードプレイス(家庭、職場に次ぐ第3の場所)としてお客様に新しい風を吹き込む」ということだそうです。
ブランドパーソナリティとは、「信頼感のある」「先進的な」などブランドが持つ人格的な属性のことです。先述のスターバックスを例にとると、「快適な」「本物」「親しみやすい」といったところでしょうか。
ブランディングを長期的に行っていくためには、特にブランドパーソナリティは必須だとされています。
Webサイトに関してもブランドの価値規定は同じく重要です。適切なブランディングができていないWebサイトはユーザーに愛想をつかされてしまいます。
Webサイトを魅力のあるものにするためには、企業のブランドエッセンス・ブランドパーソナリティに沿ったサイトを構築するのがもちろん最善なのですが、中小企業でそれらをきっちりと規定しているところはあまりないかもしれません。 そんなときは、Webサイト独自のブランドエッセンス・ブランドパーソナリティを設けても問題ありません。ただし、既存のWebサイトがある場合、部分的に価値規定を取り入れるようなことは避けた方がよいでしょう。Webサイトがちぐはぐな印象になってしまうおそれがあります。
7 まとめ
ここまでいろいろと書いてきましたが、つまるところ、ブランディングとは「共通のイメージを消費者の頭や心の中に植え付けるための方法の総称」です。自社(もしくは商品やサービス)が消費者に与えることができる価値を明確にし、その価値規定を伝えることに適した手段を考え、一貫して実施し、問題があれば改善していく…これを継続して行うことが必要です。 なかなか骨の折れる作業ですが、その分、ブランディングを正しく行えば、競争力の強化、長期的な利益の獲得につながることが期待できます。
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